大正、昭和の髙田家 業績
昭和5年~15年
東京帝室博物館委嘱により、
正倉院染織品、国宝等歴史的衣服、調度類の実測調査、調査報告書作成、復元について
昭和5年より約10年間、髙田義男は東京帝室博物館の委嘱により調査を命じられ、その後これに基づき以下のようなものを復元模造し、それら現品は現在、東京国立博物館、奈良国立博物館、髙田装束研究所に収蔵されています。
正倉院染織品の復元について
これより先に東京帝室博物館では、正倉院の染織品を世に知らせるために「上代染織文」という印刷物を出版することになり、これの解説に当時造神宮使庁の井上清氏があたることになり、織物組織の解説について髙田義男がご協力することになりました。
その時、帝室博物館大島義脩氏に髙田義男の復元に対する熱意や、諸般の製作する準備があることを述べ、「正倉院の織物には特に色々な組織のものがあり、たんに文様を紹介するためのものなら印刷物で良いが、後世のために復元模造をしなくてはいけない」と髙田が申し上げたところ、大島氏に賛同していただき、ご了解を得ました。その当時、京都でも数人の方が化学染料で正倉院復元染織品をおやりになられていたが、それでは充分ではないというので是非任せようということになりました。
調査のため秋に正倉院に数度伺い、綾、錦類を何度も織り直して、22種を復元し、そのために約10年以上かかり完成しました。ものによっては3年も費やしたものもありました。博物館には組織図と解説書を付してお納めしました。戦後には奈良国立博物館でもわけてもらいたいということで納品をしました。
紫地鳳形錦 正倉院宝物織物 昭和初期、髙田義男復元 聖武天皇の、いわゆる脇息の生地。三枚綾組織の緯錦。 |
鎌倉・鶴岡八幡宮御衣等の復元について 帝室博物館歴史課では古代からの衣装類の模造品を製作することになって、第1回は鶴岡八幡宮にある、現存する袿形式で日本最古(鎌倉時代のものとされている)のものを調査復元をしました。調査時、当時宮内省図書課の河鰭実英氏が是非一緒に拝見したいということで同行しました。その時に装束のこと、織物のことを髙田がご説明させていただき、後に河鰭氏は有職故実の先生になられ髙田と協力し数々の有職解説書をお出しになられました。 袿(うちき) 原品は国宝 鎌倉時代 白小葵地鳳凰文二陪織物 昭和初期、髙田義男復元 |
和歌山・熊野速玉大社御神宝装束の復元について 熊野速玉大社の御宝物の調査と復元を行いました。この御社は非常に多くの御神衣、その他付属品があり、数年計画で行うことになりました。御神衣のほかにも檜扇などの工芸品が多数ありました。檜扇(衵扇)の復元には現地の杉材を使用しました。 衵(あこめ) 実際は「袿」(うちき) 原品は国宝 室町時代 表 萌葱小葵地浮線綾(臥蝶丸)文二陪織物 昭和初期、髙田義男復元 |
愛知・熱田神宮御神宝装束の復元について
名古屋・熱田神宮に足利将軍寄進と言われている御神衣(女物)があり、当時の権宮司様にご協力いただき復元が完成しました。
京都・浦嶋神社(浦神社)縫箔肩裾小袖の復元について
この縫箔小袖には刺繍が多くあり、非常に大変だったそうです。戦後博物館の展覧会で実物と当方の復製を一緒に陳列されましたが、月日が少々経っていたせいか色が落ち着いて、いい味のものになっていたそうです。
京都・東寺舎利会装束の復元について
東寺に伝わる蛮絵の褐衣について、当時各学者方々は生地の麻にどのように絵を描いていたか議論をかさねておられた所、髙田義男は調査研究し方法がわかり、麻布を特別に織り完成しました。
和歌山・高野山天野社延年の舞装束等の復元について
天野社に伝わった舞楽装束などを復元しました。高野山には多くの寺社があり、それぞれの宝物庫に入り調査し、多くのものを製作しました。
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